【こらむ】やまとなかま そのいち

やまとなかま そのいち ライター てんこ

映画で有名なロードオブザリングは子供のころから瀬田貞二の訳で旅の仲間という邦題の3部作の本として読んでいた。この本やナルニア国物語でもそうだが登場人物たちは何らかの旅を行いその過程でよくお互いに疑心暗鬼になる。

山行にもそういうところがあると思う。技量も山に対する嗜好性もどんぴしゃなパートナーがいる人は本当に幸せだ。多くの人は自分とは違う技量や嗜好性の人となんとか折り合わせて山に行き、なんとなく物足りない感が残ることも珍しくないだろう。

私が学生のときはじめて付き合った彼は山関係の部の後輩だった。彼はわたしはあまり一緒に行きたくない人とも山に行っていた。なんで?と聞いたら、逆になんで仲いい人とだけ山に行かなきゃいけないの?と聞き返され、仲良くない人と山に行った方が面白いじゃないと言われた。その言葉は印象的でその時は理解できなかったが私の中にずっと残った。ちなみに自分のつきあった人間から自分に対して言われる発言は時にとても的確なことがある。別れるときに特にそうだ。付き合ったのだから私のことをよく知っている人が、別れるからそれまで遠慮して言えなかったことを云ってくれるのだから、自分の知らなかった自分について教えてくれることが多いように思う。

去年の夏私は20そこそこの彼の放った言葉がよく理解できる体験をした。何年も前から行きたいルートがあった。以前そのルートに行ったときフォローの同行者がピトンを抜いてしまいそのまま敗退してきたのだ。そのピトンを打ち直しまたそのルートを完登したかったのだが、なかなか一緒に行ってくれる人がいなくてそのため2年前地元の勤労者山岳会にもう50を過ぎている自分が入ったのだ。ほとんどそのルートに行きたいがために。うまく一緒に行ってくれるパートナーを得て、一人落伍者が出たけれど、猛暑の季節、水を一人4リットルもって2日間の工程のルートに3人で向かうことができた。

登攀力は自分が一番あるが体力はほかの2名のほうがずっとあるはずだった。
一人は私より20歳も若い男性だったが体調が悪かったらしく一日目リードしたがるので任せても途中敗退が2ピッチもあり時間もずいぶんロスした。時間に余裕はない厳しいクライミングなのでその後はその子にリードはさせず先を急いだが、もう少しで快適なビバークポイントに着くという手前で暗くなってしまった。ルート工作だけ終わらせてから戻り斜めの岩棚で3人窮屈な格好でビバークをして一夜を過ごした。もう一人の私より若干若い男性は思ったよりずっと登れていて頼もしかった。二人で来ていればもっと先まで行けたのに、この壁を一日で終わらせられたのにと思った。

二日目は前日自分の最大の力を出して登り切りロープを張っておいた核心ピッチを終わらせ、抜けたピトンも打ち直すことができた。この旅の目的の一つは達した。そのあともすごい藪と闘いながらその壁を20ピッチほどで抜けることができた。一番若い子はぜえぜえ言いながらだいぶ遅れてついてきていた。脱水症状なんじゃない?水があまりないというので私ともう一人はまだたくさん水を持っていたから彼に飲ませるとだいぶ回復したように見えた。とにかく暑くて汗が滝のように流れるがまだこの藪と闘ってしばらく稜線を辿りコルをみつけてそこを下って初めて水が得られる。ルートはわかりにくかったが、しばらくしてはっきりした赤ペンキのマーカーを見つけることができた。もう安心だ。ルートがはっきりしてからもすごい藪であることは変わらずしばらく藪と格闘の末に二日目の午後2時ごろになってやっと水が流れている沢に到達した。3人で心行くまで水を飲む。
それからテン場まで二日目暗くなりだす頃にやっと戻ることができた。暑さと重荷とプアプロの長いルートを3人で協力してやり終えたのだ。

一番ばてていた若いやつは出発の前日熱が出ていけないかもしれないと心配して根性で寝て治して参加していた。遅かったのはまだ体調が治りきってはいなかったのだろう。不調で脱水症状で辛いクライミングとやぶこぎだったのに関わらずとても楽しかったという彼のメンタルってすごいと思った。また頼れるけどクライミングはあまりうまくないと思っていた私より少し若いやつは、いつも元気で機嫌がよくチームのムードを楽しいものにしてくれたし、アルパインになるともたもたしないでサクサクと登っていてジムでみるくらいミングとの違いに驚いた。

決して仲がよいわけでもないそのときはじめての組み合わせの3人、技量や体力が万全なわけではなかった、それぞれの力を出し切ってやっと登れたということではこれ以上印象的な山行はわたしにはない。そのとき昔の彼の発言 気が合わないひとと行く山行の方が面白いという意味がわかった。
次は最近よく一緒に行っているほんとうに気の合わないむかつく人間と行く山行について書いてみたい。

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